夏の夜

日本にいる頃は、夏の夜が好きだった。
実家京都の夏の夜は、虫の声が響いて昼間の猛暑が嘘のような静けさをもたらす。
母と一緒に散歩がてら近くの商店街へ買い物に行くと、澄んだ空気と緩やかな風が心地良い。

上海に来ると、年中外は車の走る音と店のネオンが騒がしくて、涼を求めることすら忘れかけていた。
そんな2回目の夏は、日本で感じた感覚が呼び戻せそうだ。
荷物整理も落ち着いて、ようやく引っ越してきたマンションの敷地内を歩く。
生まれ育った街を思い出す、静けさと虫の声。
近所の人たちが涼を求めて散歩に出る姿。
どれもこれも目新しい景色なのに、懐かしくて愛しい。

今年の夏の夜は、散歩に出かけることにしよう。